こんにちは。Gerbera Music Agency代表の金野です。

音楽スタジオ

 

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東京で活動しているアーティストやバンドが日本武道館でのワンマンライブを目標とした場合、規模感の推移を超ざっくり書くとこんな感じかと思います。

レベル1:キャパ〜300人まで

レベル2:キャパ300〜キャパ800人まで(動員800人到達でクアトロ級*1

レベル3:キャパ800〜キャパ2500人まで(動員2500人到達でZepp級*2

レベル4:キャパ2500人〜8000人まで(動員8000人到達で武道館級*3

*1:渋谷CLUB QUATTROを想定しています
*2:Zepp DiverCity東京を想定しています
*3:日本武道館の最大収容人数は全ての席を開放した場合14000人を超えますが、全席開放でのワンマンライブの方が少ない認識なのでここでは8000人とします

今回のテーマは、無名のアーティストがレベル1から2へステップアップするにはどんな動き方をすべきか、です。

※規模感を「レベル」という言葉で表現するのは適切ではない気がしますが、分かりやすさを考えここではレベルとします。

※音楽活動のあり方は昔と比べずいぶん多様化しました。別に音楽だけで飯を食わないといけないわけでもありませんし、武道館ワンマンできるアーティストが偉いというわけでもありません。ただ、武道館のステージから見える景色を求めて活動しているアーティストも多いと思うので、今回は動員規模を追求する記事にしようかと思います。

方針を決める:何を捨て、何を優先して活動するべきか

バンドにしてもシンガーソングライターにしても、日本で活動するほとんどのアーティストがワンマンライブ規模〜300人のレベル1に属しています。レベル2に到達しているアーティストとなると数がガクッと落ちますし、それ以上の規模となると本当にごく僅かです。では、無名のアーティストがレベル2に到達するためにはどうすれば良いのでしょうか?

フェスに出る。ミュージックビデオをつくる。アルバムをリリースする。コンテストに応募する。TwitterやInstagramで情報発信をがんばる…。音楽活動と一口に言ってもいろんな活動の仕方がありますよね。ただし、予め決められた方針に基づいた動きでなければあまり効果的ではありません。

レベル1からレベル2にステップアップするにあたり僕が最もおすすめする方針が「自力で(=コネや金の力によるゴリ押しに頼らず)スマッシュヒットを出すこと」です。アルバムをつくるにしてもミュージックビデオをつくるにしても、これら具体的な動きは全て「自力でスマッシュヒットを出すこと」を見据えて動くべきです。で、その方針に基づくアクションは「精力的な楽曲制作とコンスタントなリリース」であるべきです。

スマッシュヒットというのは、ネット上で公開した自分たちの楽曲が著名アーティストや音楽メディアにフックアップされて多くのリスナーに聴かれたり、リスナーのシェアが連鎖して話題になる、みたいな現象をイメージしています。一昨年だと米津玄師さんによるKing Gnuのフックアップ、去年だとKANA-BOONのボーカル鮪さんによるズーカラデルのフックアップなどありましたが、例えばそういうイメージです。

2016年春にもポルカドットスティングレイのテレキャスター・ストライプが話題になりましたが、これもtricotの中嶋イッキュウさん、SpincoasterBASEMENT-TIMESが立て続けに紹介して火がついたからです。

以下、方針とアクションについてもう少し詳しく書きます。

一般的にアーティストの活動サイクルを超シンプルに書くと、「楽曲制作→アルバムリリース(リリース前後に宣伝稼働)→ライブ(自主企画を売ったり、ツアーを回ったり)」で1つのサイクルになります。もちろん楽曲制作とアルバムリリースの間にシングルリリースが入ったり、フェスに出演する期間があったりなど、実際はもっと多様ですが、だいたいはこのサイクルと考えてよいでしょう。僕は無名のアーティストがこのサイクルで活動することをすすめません。なぜなら代表曲がない状態だと金銭的なコスト、時間的なコストに対しリターンが見合わないからです。このサイクルに突入するのはスマッシュヒットを出し、自分たちに一定の知名度と勢いが生まれた後でいい

「知名度を上げるためにフェスに出よう」みたいな動き方もNGです。1つの経験としてフェスに出る分にはかまいませんが、「名刺代わりの1曲」がない状態で運良くフェスに出られても広がる知名度はたかが知れているからです。自分たちの出演時間と被っている格上アーティストとの戦いにもまず勝てません。
また、自分たちの曲を多くの人に知ってもらうためにいきなり予算を投下して広告出稿したり、マーケティングを勉強して「広める動き」に注力する方もいます。音楽プロモーションやマーケティングを仕事にしている人間として言いますが、やめたほうがいいです。「え? そもそも知ってもらう機会をつくらないとスマッシュヒット出なくない?」と思うかもしれませんが、2016年春のポルカドットスティングレイの動きや、2018年はじめのズーカラデルの動きをチェックしてみてください。別に大きな予算を投下せずとも火がついています。最初のスマッシュヒットは楽曲に強度さえあれば出せますし、楽曲の強度で出すべきです。

では、自力でスマッシュヒットを出すためにできる具体的な動きとは何でしょうか?

自力でスマッシュヒットを出すために適した動きとは?

僕は「常に楽曲制作を行いながら毎月最低1回は必ず新曲を公開する」こと、そして、「周囲から明らかに好意的な反応があるまでそれを継続すること」をおすすめします。楽曲制作に再注力すべきです。
ちなみに、コストがかかるので最初のうちはCDをつくったり流通させたりする必要はないと考えています。YouTube、Twitter/Instagram、SoundCloud、各種サブスクなど、ネット上で曲が聴けるようにすることが重要です*4

で、楽曲を公開するごとに周囲の反応をチェックします。SNS上で公開してフォロワーの反応を伺うだけでなく、できればお世話になっている音楽関係者やアーティストの友人、音楽ライターの方々にも楽曲のリンクを送れると尚良いです。その結果、反応が鈍かった場合は自分たちの楽曲がシーンにフィットしていないと判断し、その反省をもとに、より良い楽曲を制作します(つまり、ただ曲を量産してるだけではダメ。制作を通じてシーンやリスナーと対話してください)。リスナーに媚びる必要はありませんが、シーンの研究や今勢いのある国内外アーティストの楽曲をしっかりキャッチアップし、制作に反映していくことは重要です。

*4:完成した新曲をネット上にどう公開するかについてはセンスが求められます。公開の仕方で反応が大きく変わる可能性もあります。ひとつ言えるのは音声データだけ聴かせるよりも動画データで観てもらうほうがベターだということです。予算に余裕がない場合は、短尺動画のループでも良いですし、最悪静止画に音声データをつけてアップしても良いです。ただし、映像にしろ画像にしろテキトーなものはダメです。楽曲のイメージをしっかりと伝えられる、センスの良いものである必要があります。また、もし周囲にセンスの良い映像作家さんや映像系の専門学校生がいたらぜひ自分のチームに引き入れたいところです。具体的なイメージが湧かない場合はSUKISHAのTwitter上での動きを見て盗みましょう。楽曲制作をどれだけ重要視して活動をしているかも分かるはずです。

毎月楽曲を公開できるほどレコーディング費がなかったらどうする?

最悪、デモ音源でも良いので公開すべきだと僕は考えます。楽曲の質と量のどちらを優先すべきか?という問いには「両方」としか答えられないのですが、強いて言えば量です。楽曲の質にこだわるあまり公開ペースが落ちるより、多少ラフでもコンスタントに曲を公開し続けられる状態をつくるほうがいい。

この件についてもSUKISHA氏が先日ブログを書いていましたので紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

②音源のレコーディング代。
インディーズの無名バンドが、レコーディングスタジオで全てを録る必要ないのでは?
ちゃんと予算が出る状態で行うならわかるんですが、一番最初のバンドの音源なんて正直デモレベルでいいと思うんです。
その音が段々良くなっていくというのも応援する醍醐味のはずなので。
なので、思い切ってドラムは打ち込み、レコーディングも自分たちで宅録を活用するのがいいと思います。
ドラム以外のレコーディングは全てパソコンがあれば出来ます。
Macを元々持っていればlogic、あとはオーディオインターフェースを用意すれば、ギターや歌に関してはスタジオでマイクを借りて個人練料金で自分たちで録ればいいし、ベースはライン直でも全然大丈夫。
ドラムは残念ですが録音するのは時間とお金がかかるので、思い切って打ち込み用のソフト音源を買ってしまうのがいいでしょう。
BFDかAddictive Drumsが間違いないと思います。下手に録音するよりいい音がします。
すると多分全部合わせて10-15万くらいで出来るんじゃないかな?
ドラマーにしてみれば「ふざけんな」って思うかもしれないけど、やってみて欲しいと思うのは絶対損はしないから。
打ち込みを学ぶと絶対ドラムもうまくなります。
厳しいことを言うかもしれないけど、ドラムの録音費用が賄えないのはまだ求められていないからとも言えます。
「うちが予算出すからレコーディングしようよ」とどこかから声がかかっていない限り、それが今の自分たちの実力なわけだから。
だからと言って諦めて欲しくないし、限られた資源の中でもいいものを作って欲しい。
それが理由で「お金がいつもない」なんて嘆いて欲しくないんです。
あと曲さえよければ、音の質が多少悪くともわざわざCDを買う層やネットでディグってる層には伝わります。
とにかく作品を出しましょう。クオリティや迫力はライブで伝えれば良いと思います。

引用:1/30 – 怠け者は今日も眠る

スマッシュヒットの兆しが見えたor実際にスマッシュヒットが出たらどうする?

ここまでは「ジャブ」の打ち方について書いてきましたが、もし自分たちがネット上で公開した楽曲が何かのきっかけで広まったり、周囲の人達から明らかにポジティブな反応が帰ってきた場合は「ストレート」を打つタイミングです。予算をかけてその曲をレコーディング→CD/レコードをリリースしたり、ミュージックビデオをつくったり、リミックスをつくってサブスクでプレイリスト入りを狙ったりなど、その曲がより多くの人に届くよう時間・労力・お金をかけていくべき(弊社のようなPR/広告代理店が最も活きるのもこのタイミングです)。パチンコで例えるとこの時期は「確変中」です。スマッシュヒットによって生まれた「勢い」にはいつか終わりが訪れますが、それまではその勢いを最大限活かしていくと良いでしょう。

また、その曲がどれだけバズった(ネット上で話題になった)かにもよりますが、一般的に、スマッシュヒットを出したアーティストにはさまざまな「オファー」が舞い込むようになります。それは格上アーティストからの対バンオファーだったり、メディアからのインタビュー依頼であったり、フェスの出演依頼だったり。レーベルや事務所の方からのコンタクトもあるでしょう。センスの良いクリエイターを引き入れやすくなるなど、チームづくりもだいぶ楽になります。

このタイミングで何より重要なのは「浮き足立たず、楽曲制作第一主義を貫くこと」です。繰り返しになりますがスマッシュヒットによって生まれた勢いにはいずれ終わりが訪れます。本来望ましいのは勢いが死ぬまでに第2第3のヒット曲を生み出すこと。事実、レベル2以上のアーティストのほとんどが複数のヒット曲を積み上げて現在のポジションにいます。弊社のクライアントアーティストもそうです。

また、舞い込んだ「オファー」で結果を出すことも重要です。特にライブ。オープニングアクトに呼ばれることが増えると思います。これまで関わりのなかったコンサートプロモーター案件が増えたり、ライブもスリーマン/ツーマンになってくることもあるでしょう。サーキットフェスではステージのトップバッターやトリなどの有利なポジションを任されたり、動員1万人超えの野外フェスに呼ばれることもあるかもしれません。そういう場で良いパフォーマンスができるかどうかです。ありがちなのは「◯◯は曲はいいけどライブはイマイチだったね」みたいな負の口コミのせいでせっかく生まれた勢いが失速してしまうこと。これはもったいないです。スマッシュヒット後はライブの重みが増すというのは覚えておいたほうが良いでしょう。

また、一度「呼ばれる側」になると時間の使い方が難しくなるというのも覚えておくと良いかもしれません。これまではスマッシュヒットを出すことに集中できたものが、そうも言ってられなくなるんです。リリースの前後の宣伝稼働は増えますし、前述の通り呼ばれるフェスも増えますし、ツアーする地域も増えます。リハにかける時間も増えます。以前ほどまとまった時間を取れなくなるため、特に作詞作曲を担うメンバーは制作に充てられる時間を工夫して捻出する必要が出てきます。余談ですがメンバーが失踪しやすくなるのもこの時期あたりからな気がします。身体的な負担と同時に、精神的にもしんどくなるので。

より時間的な制約が増えた環境でも楽曲制作に軸足を置いて活動し、次のヒット曲を生み出せるかどうか。それが次のステージに進むための重要なポイントです。

ここまでだいぶ長文を書いてしまいましたが、詳しく書こうとすると非常に長くなるため今回はこれで終わりにします。女性シンガーソングライターとバンドとトラックメイカーでは動き方や魅せ方において重要な点が異なるとか、海外進出の場合に重要なことであるとか、そういったトピックについては今後また書いていければと思います。

ちなみに、アーティストの音楽プロモーションやPRを行っている弊社(Gerbera Music Agency)では、記事冒頭で書いた規模感でいうレベル2からレベル3へのステップアップを試みているアーティストの事務所/レーベルが主なクライアントです(具体的な名前は出せません。このサイトのクライアント一覧ページに記載していないアーティストの方が多いです)。その他、Spotifyに特化したプレイリストレーベルなども運営しています。先述の通り、最初のスマッシュヒットを出すためにプロモーションの力に頼るのはあまりおすすめしませんが、何か弊社で役に立てることがあればお気軽にお問い合わせください。

最後にお知らせ

文脈特化型プレイリストレーベル『Pluto』を立ち上げました

【Pluto】プレイリスト制作代行サービスを公開しました

筆者のTwitter(@konno108)