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音楽業界特化型のデジタル広告代理店、Gerbera Music Agencyです。今回は、音楽アーティストの楽曲がSpotifyのバイラルチャートに入った際、勢いを持続させるためにやるべきことについて、いくつかのカテゴリーに分けて解説します。
<目次>
- Spotifyのバイラルチャートとは?
- バイラルチャートに入った要因を特定し、適切にブーストすること
- UGCの広まりをDSPの再生に落とし込むこと
- 現地リスナーに好きになってもらう努力
- 最後に:単発で終わらないためにすべき、中期的施策
※UGC(User Generated Content)とは:ユーザー生成コンテンツの略。近年ではTikTokやInstagramリール、YouTubeショートといったショート動画形態のUGCがヒットを生むことが多いが、Xの投稿やSpotifyのプレイリスト、ブログなどもUGCに含まれる
※DSP(Digital Service Provider)とは:SpotifyやApple Music、Amazon musicといったデジタル音楽配信事業者のこと。広告枠の買い付けを行うDemand-Side PlatformもDSPと略されますが、音楽業界におけるDSPは主に前者を指します。
Spotifyのバイラルチャートとは?
バイラルチャートとは、『いまSNSで最も話題になっている曲』をSpotifyが独自に指標化したチャートです。Spotify公式によると、チャートの配置は、以下の要因によって決まる仕組みのようです。
・その楽曲の再生数が最近上昇したか
・その楽曲が(InstagramやXなどのSNSで)シェアされている頻度
※カッコ内は当社補足
・
その楽曲を最近見つけたリスナーの数
集計の対象となる国に関しては、グローバルチャート(バイラルトップ50 – グローバル)ではすべてのリスナーのデータが使用され、地域別のチャートでは特定の地域のリスナーに関するデータが使用されます。具体的にはバイラルトップ50 – 日本、バイラルトップ50 – 台湾、バイラルトップ50 – アメリカ合衆国などがあり、各国のチャートは以下から確認することができます。
・Spotify Charts
https://charts.spotify.com/
なお、バイラルチャートに入る傾向については、SpotifyとCINRA.NETが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジン「Kompass」に掲載されている「バイラルチャート」に見る、リスナー主体のヒットの生まれ方 という記事で以下のように紹介されています。
1つ目は、アーティスト自身の大きなアクションによる話題性
2つ目は、映画やドラマやCMとのタイアップによる話題性
3つ目は、TikTokのUGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)による自然発生的なブーム
これまでサービスを提供するなかで当社が体感したバイラルチャートインの傾向としては、SNS広告を通じて特定の国において楽曲の再生数が飛躍的に増加し続けると、ある一定の閾値を超えたタイミングでバイラルチャートに入る印象です。このケースにおいては「SNS上で楽曲がシェアされること」はあまりないのですが、その代わりに「楽曲再生数の上昇率」や「新規リスナーを開拓できた数」が飛躍的に増加し続けています。この2点の増加がバイラルチャート入りにつながったのだと推察しています。
それでは、実際にバイラルチャートインしたあとにやるべきことについて解説していきます。
バイラルチャートに入った要因を特定し、適切にブーストすること
前述の通りバイラルチャート入りするパターンは複数ありますので、まずは何をきっかけにチャートインしたのかを特定するところからスタートします。数日前に投稿したショート動画がバズったのであればその動画が要因の可能性がありますし、誰かが投稿してくれたUGCがリールでバズった結果チャートインした可能性もあります。
Spotify、Apple Music、LINE MUSIC、Amazon musicであればfor Artistsを使って再生数やリスナー数の分析が可能です。Apple Music for ArtistsであればShazam数の推移も確認できます。YouTube Studioを使えばYouTubeやYouTube Musicの分析ができます。まずはこうしたツールをチェックして直近数日でスパイク(急激な再生数の伸び)が発生しているかを確認し、発生しているのであれば発生日の前後でアーティスト自身のSNS周りの動向とUGC周りの動向、YouTubeのコメント欄などをチェックしましょう。TikTokのUGCに関してはChartmetricに事前に登録さえしておけば日別の増加数をグラフでモニタリングすることができますので便利です。
もしUGCの数が増加しているのであればよりUGC数を増やすような施策(SNS広告やインフルエンサーマーケティング)に、単体の投稿がひたすら伸びている場合はその投稿を活用してDSP送客数を増やすようなSNS広告施策を実施するのが良いかと思います。
もしSNS広告の寄与によってバイラルチャートに入った場合、力技にはなりますが、実施しているSNS広告の予算を増やしてさらにチャート上位を狙うことも可能です。当社では過去に二度、予算増額を通じて担当した楽曲がその国のバイラルチャートの首位に到達したことがあります。
・ALBATROSS海部洋に訊く、インディペンデントな活動を支援する広告施策と台湾バイラルヒットの手ごたえ
https://gerbera-music.agency/blog/interview-albatross/
また、広告のパフォーマンスを牽引している広告動画があるはずですので、その広告動画を各種SNSアカウントでオーガニック投稿することによってさらなる伸びをつくれるかもしれません。もし海外のバイラルチャートにインした場合、チャートインした国の言語の歌詞も入れて投稿すると現地リスナーの反響をより得やすくなります。最近は以下のような複数言語の併記がトレンドになっていますね。
また、海外のバイラルチャートにインした場合はその国の人気曲をカバーしてショート動画を投稿するといったアプローチもあります。K-POP第5世代女性ソロアーティストであるGYUBIN(Warner Music Korea所属)がデビュー・シングル「Really Like You」で2024年3月6日付の「バイラルトップ50 – 日本」の首位を獲得した際は、その2日後にあいみょんの「ハルノヒ」のカバー動画をInstagramリールやTikTokに投稿していました。投稿されたのはチャートイン2日後の3月8日。Gyubinがあいみょんのことを元から好きだったことを差し引いても、かなりスピーディーに撮影・投稿されたことが分かります。こうした「兆し」に対して適切にブーストする動きが取れると良いかと思います。
@gyubin1128 🌸아이묭(Aimyon, あいみょん) – 봄날 (Harunohi, ハルノヒ)🌸 #아이묭 #Aimyon #あいみょん #봄날 #ハルノヒ ♬ 오리지널 사운드 – GYUBIN(규빈)
UGCの広まりをDSPの再生に落とし込むこと
仮に自身の楽曲のUGCが増加していることによってバイラルチャートに入った場合、楽曲の広がりがしっかりとDSPの再生につながっているのかをチェックする必要があります。増加しているUGCの主役が楽曲であればおおよそDSPの再生につながりやすい認識ですが、楽曲が脇役になっている場合はUGCの広がりほど再生数は増加していないかもしれません。このあたりも前述のfor Artists系ツールやYouTube StudioとUGCの増加推移を突き合わせて検証してみましょう。
もしUGCの広がりほどDSPの再生数が増えていない場合、UGCに触れたリスナーはそのUGCで使用されている楽曲やアーティストに関心が及んでいない可能性があります。そうした際、UGCが広まっている界隈をターゲティングしてInstagram広告やTikTok広告を配信し、UGCの広まりを楽曲再生に落とし込むアプローチが有効です。当社においては日本を除くとメキシコやインドにおいてこのアプローチを行い、成果につなげることができました。
もしUGCの広まりがDSPの再生につながってきているのであれば、ここまでのUGCの広がりやDSP/YouTubeなどへの波及状況を資料にまとめて、楽曲配信を行っているディストリビューターに伝えることで、ディストリビューターを経由して各種DSPに営業してもらえるかもしれません。上手く行けばさらなるプレイリスト入りが狙えます。取りまとめた資料はそのまま音楽メディア各社へのプレスリリースや営業にも活用可能ですので、作成して損はないかと思います。
現地リスナーに好きになってもらう努力
海外のバイラルチャートにインした場合、ブースト施策も重要ですが現地のリスナーがよりそのアーティストを好きになってもらえるような施策も並行して考えることが重要だと考えています。最近でははじめから複数言語の字幕に対応したミュージックビデオがYouTubeで公開されるケースも増えてきている印象ですが、もしバイラルチャートインした国の言語が字幕に入っていない場合は入れましょう。また、入れただけでは伝わりにくいのでコメント欄や概要欄、コミュニティ投稿などで字幕対応したことをアピールすると良いかと思います。
また、その国の言語で、チャートインしたことを各種SNSでアピールするのが良いと思います。
「本当だよ」がSpotify バイラルチャート台湾の15位にランクインしました🙌
— ナツノセ(Natsunose) (@soh65486793) July 29, 2024
たくさん聞いてくれてありがとうございます🎐🎐
It’s true” 现在在 Spotify 病毒榜台湾排名第 15 🙌
感谢您的收听🎐🎐https://t.co/O8ooQxDwWf pic.twitter.com/NkcqKcuyoi
最後に:単発で終わらないためにすべき、中期的施策
今後もリリースが続いていくことを考えると、中長期的にその国でファンベースを築いていけるような「次の一手」を仕込んでいくことも重要です。海外のバイラルチャートにインした場合、地理的な問題もあって国内と同じようにはなかなか仕込みにくいと思いますが、例えば現地アーティストとの共作曲を配信リリースすることが挙げられます。日本でも少しずつ海外アーティストとの共作曲やRemixのリリースが増えてきている印象ですが、まだまだ成功事例は少なく、開拓しがいのある領域だと思います。
また、そもそもの話ですが日本以外の国で中長期的なファンベースを築いていきたいのであればその国に関心を持つこと、その国の音楽に関心を持つことが何より重要だと思います。前述のGyubinが良い例ですが、彼女がバイラルチャート1位の知らせを受けて即座にあいみょんのカバー動画を撮影することができたのは、彼女がそれ以前から日本の音楽に触れていたからです。海外アーティストとの共作曲を計画するにしても、リスペクトし合える関係性を築ける相手でなければ上手く行かないのではないかと思います。
洋楽曲が聴かれなくなって久しい日本の音楽シーンですが…海外のリスナーやアーティストと関係性を築いていくうえで最も重要なのは、関係性を築いていきたいと考えている国の文化に興味を持ち、理解していこうという姿勢なのではないかと考えています。アーティストご本人も、アーティストを支える方々も。
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