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規模の大きなアーティストで広告効果を測定する方法

2023.11.30

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DSPの楽曲再生数やフォロワー数を増加させる広告を実施する場合、規模の大きなアーティストほど、何もせずとも獲得できている再生数やフォロワー数が多いため、広告効果を測定するのが難しいという問題があります。今回は、規模の大きなアーティストで広告効果を測定する方法について解説します。

Spotify月間リスナー数30万人、Apple Musicリスナー数(1日の平均)3万人が分かれ目


まだファンベースがほとんどない駆け出しのアーティストの場合、広告の効果測定はシンプルです。何もせずとも獲得できている日次の再生数/フォロワー数が少ないので、広告実施前後で跳ねたかどうかは分析ツールを見れば把握は容易です。リリース直後にリストインするプレイリストの数も少ないため、プレイリストによって獲得できている再生数を差し引いて広告効果を分析する必要もありません。

対して、すでにファンベースを抱えているアーティストの場合、広告の効果測定は複雑で難しくなります。理由は主に以下の通りです。

1:何もせずとも獲得できている再生数やフォロワー数が多く、かつ波があるため、広告による増加分が埋もれやすい
2:リリース直後に入るプレイリストの数も多いため、プレイリストによる増加分やプレイリスト落ちした後の再生数減少分を差し引いて分析する必要がある
3:その他、テレビでの露出やショート動画でのバズ、街鳴りなどのその他施策の影響など、再生数/フォロワー数に影響を与えている変数がある場合はそれも差し引いて分析する必要がある

当社では駆け出しのアーティストのご相談をいただくこともありますし、Spotifyの月間リスナーやYouTubeのチャンネル登録者が100万人、300万人を超えるアーティストのご相談をいただくこともあり、かなり幅があります。そのなかで、DSPの楽曲再生数やフォロワー数を増加させる広告を実施する場合、広告の効果分析が難しくなる分かれ目はSpotify月間リスナー数で30万人、Apple Musicリスナー数(1日の平均)で3万人あたりの印象を持っています。もちろん広告の予算にもよってくるのですが、この規模感を超えてくると、Spotify for ArtistsやApple Music for Artistsにて広告実施期間中における再生数/リスナー数/フォロワー数の推移を見るだけでは効果が見えてこない可能性があります。では、どうするのが良いでしょうか?

効果測定の方法


まず前提として、厳密な効果測定が難しく、ある程度類推せざるをえない環境であることを理解する必要があります。一般的な企業のマーケティング、例えば飲料メーカーがSNS広告を通じて自社のECサイトで売上を伸ばしたいとした場合、効果測定はシンプルです。そのECサイトには計測タグが埋め込めますので、広告寄与による販売数、売上を正確に算出することができます。広告予算の何倍程度の売上が上がったのかも容易に計算できます。これが音楽業界でもできれば誰も苦労していません。

残念ながら、一般的に音楽業界の広告施策において広告遷移先になるようなApple Music、YouTube、Spotifyなどのプラットフォームには計測タグは埋め込めません。ゆえに、広告寄与による再生数/リスナー数/フォロワー数などの数値は算出ができません。ですから、Apple Music for ArtistsやSpotify for Artists、YouTube Studioといった広告遷移先となるプラットフォームが提供している分析ツールを見ながら、広告実施期間前後で伸びたか/伸びなかったかをチェックするという、だいぶざっくりとした分析にならざるをえません。こうした事情が、規模の大きいアーティストの効果測定を難しくしていると私は認識しています。

そうした状況下で広告施策の効果を測定するには、Spotify for ArtistsやApple Music for Artistsを使い倒すしかありません。Spotify for Artistsは「音楽」と「オーディエンス」というメニューがあります。「音楽」では楽曲やアルバム/EPごとの再生数やリスナー数、プレイリスト追加数、セーブ数などを期間別/国別で見ることができます。

Spotify for Artists「音楽」の画面(2023年11月現在)


広告がうまく送客できている場合、プレイリスト追加数/セーブ数は上昇します。しかも多くの場合、日々の変動幅は再生数やリスナー数ほど大きくはありません。そのため、広告として使用している楽曲が広告実施期間中にプレイリスト追加数/セーブ数が増加しているかどうかは確認すべきです。なお、複数カ国に対して広告を実施している場合、広告予算が多く配分されている国から順にこの作業を行います。

「オーディエンス」では全楽曲のリスナー数や再生数を把握することができますが、それゆえに施策の跳ね返りを確認するには変動が大きすぎる場所です。リスナー数や再生数ではなく、「ストリーミングの内訳」を確認します。

Spotify for Artists「オーディエンス」の画面(2023年11月現在)


広告施策では外部からSpotifyにアクセスが流入してから楽曲再生されているため、広告経由再生のセグメントは「アーティストページとディスコグラフィー」に反映されます。あまりにも規模が大きい場合は把握ができませんが、広告がうまく行っている場合この項目が上昇するためチェックが必要です。次に「プログラムされたソース」ではエディトリアルプレイリスト(「Tokyo Super Hits!」など)経由の再生数が把握できますので、もしここが減少傾向であればプレイリスト落ちによる再生数減少期間であることが分かりますので、この期間に広告を実施している場合はその減少分を差し引いて広告の効果を見る必要があります。

その他、オープンな場なので詳細は言及を控えますが、当社がクライアント各社さまにご提案している、アルゴリズムプレイリスト経由の再生数を増加させる広告施策の効果は「アルゴリズムに基づいたプレイリストとMix」「パーソナライズド・エディトリアルプレイリスト(「都会の空と音楽と」など)」「Radioと自動再生」に現れます。これらも国ごとに見ることができますので、もし複数カ国に広告を実施している場合は広告予算が多く流れている国から順に効果を確認します。

Spotifyのアルゴリズムプレイリストの重要性については以下のコラムに記載していますので、ご興味があればぜひご覧ください。

▼Spotifyアルゴリズムプレイリストの重要性と攻略法
https://big-up.style/zine/article/column/20230412-20073



「広告施策の効果測定」という観点で言うと、Apple Music for ArtistsはSpotify for Artistsほど詳細なデータが取れませんが、Shazam数については確実にチェックしたい場所です。


Apple Music for Artists「Shazam数」の画面(2023年11月現在)


クライアントの方からはあまり信じてもらえないことがあるのですが、広告施策が上手く送客できているとShazam数が増える傾向があります。特にInstagram広告はその傾向があります。多くの場合広告にアーティスト名や曲名が記載されているので、わざわざShazamして楽曲の中身を特定しようとするリスナー行動にピンとこない方も多いかもしれませんが、広告をきっかけにお気に入り楽曲を見つけたリスナーの一定数はShazamを使います。とりわけ、海外向けに実施している広告がハマっている場合はShazam数が上昇するケースが多いため、特に海外リスナーの方が行う頻度の高い行動かと思います。そのため、広告実施期間中のShazam数は広告効果を把握するにあたり役に立つ項目です。国内の場合、街鳴りなどの施策が同時展開されていると広告寄与のShazam数が見えにくいですが、海外におけるShazam数はその影響を受けないため特に計測しやすいです。

要検討:日別の予算はそもそも足りているのか?


規模の大きいアーティストにおいてDSP再生数/フォロワー数増を目的とした広告を実施する場合、日別の広告予算がそもそも足りてない可能性も考慮する必要があります。Spotify月間リスナーが100万人を超えているアーティストにおいて、日別予算3,000円で長期間じっくり広告を展開するキャンペーンが仮にあったとしたら、そのキャンペーンは広告寄与の効果を分析ツール上で定量的に確認することはかなり難しい可能性が高いです。仮にSpotifyの月間リスナーが100万人を超えている場合、もし広告の効果を定量的に把握したい場合は日別予算は最低でも1万円は確保する必要があります。そのアーティストが全くファンベースを開拓できていない国に対して広告を実施する場合は、1日3,000円でも問題ないのですが。

なお、一般的にレコード会社のA&Rの方が広告施策を検討する際に悩むのは広告の期間ではないかと思います。期間がキッチリ決まっている看板広告や交通広告と異なり、Webの運用型広告は日別の予算をコントロールすれば期間を伸ばすことも縮めることもできます。そのため、他施策の展開期間と広告の実施機関を被せて相乗効果を狙うことも可能です。

ただ、期間を決める際に気になるのは「広告の送客効率を上げるためにベストな期間は?」という点だと思います。正確に言うと「広告の予算の大きさによって変わる」という回答になるのですが、レコード会社さまが新譜のプロモーションにかける予算額の相場を踏まえると、ベストな期間はだいたい10-30日程度な印象です。もし期間が短すぎる場合は日別予算が高くなり、伴って通常よりもCPM(広告表示1,000回あたりの単価)が高騰して送客効率が落ちてしまいますし、長すぎても日別予算が薄くなりすぎて効果が出ているかどうかが見えにくくなってしまいます。この両面と広告予算の相場を踏まえると当社としてはベストな広告実施期間はだいたい10-30日ではないかと考えております。

このように、広告の実施期間を考える際の軸としては「広告の効果が見えやすい期間は?」と「広告自体のパフォーマンスを担保するには?(≒広告の送客効率を高めるには?」と2つあり、この2つができるだけ両立する期間を定める必要があります。広告の目的や広告を通じて得たいと考えている定量的な成果、実施するエリア、予算などによってベストな期間は変動しますので、当社ではそれら与件を整理しつつ実施期間を提案させていただいております。

▼当社へのお問い合わせはこちらから可能です。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScpKVFQv0Qm5uKvBArO-7d3tjyFZzaopC_5jxNMquHK1rAn2g/viewform

UnsplashCarlos Muzaが撮影した写真をメインビジュアルに使用

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