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自主で活動するアーティストの新規サポートをやめる。という決断をしました

2017.10.11

Detail

このブログの運営元、Gerbera Music Agencyが設立から2年が経ちました。
今回は1つの区切りとして、2016年10月から今月までのできごとを振り返ろうと思います。

photo credit: Matti Vinni Gerbera close-up via photopin (license)

目次

  1. 現在の状況
    ┗完全自主のアーティストの新規サポートをやめるという決断をしました
    ┗レコード会社、音楽事務所への営業活動の結果
    ┗その後、チームで話し合った結果
  2. そもそもなぜエージェントをやろうと思ったのかを振り返る
    ┗Frekulでの1年間を通した感じた問題意識
    ┗ブッキングエージェントとPRエージェント(≒パブリシスト)
  3. Gerbera Music Agencyは今後どこに向かうのか

完全自主のアーティストの新規サポートをやめる

まず、2017年は会社の営業方針に大きな変化がありました。それは、事務所にもレーベルにも属していない、自主のアーティストの新規サポートをいったんストップするということ。

これはチームの、と言うよりは金野の力不足によるものです。会社設立当初、僕はクライアントアーティストが事務所やレーベルに所属していなかったとしても、GMAがエージェントとして関わることでブレイクさせることができるだろうという認識でいましたが、現実はそう甘くありませんでした。

やればやるほど事務所・レーベルのもつ力の大きさや重要性を感じる機会が多くなり、Web周りやデジタルマーケティングに強いだけではアーティストを大きくのし上げることは難しいかもしれないと思うようになりました。何より、初期にサポートさせていただいていたバンドがGMAを卒業し、有力なマネジメントレーベルに行ってしまったことは自分にとってかなりのショックでした。

たとえば音源制作、ファイナンス、ブッキング、ライブ制作、4マスへのプロモーション、アーティストブランディングの知見など、現状では自社でカバーできない領域が沢山ありすぎました。やってみて気づきましたが。これらの環境が整い、かつアーティストとうまく噛み合うことで物事が前に進んでいく。なので、自社だけでアーティストをのし上げるにはまだまだ時間が必要と判断せざるを得ませんでした。

最終的には『才能はあるけどまだ芽が出ない自主のアーティストをサポートして、ホールやアリーナクラスにのし上げる経験』をしたいんですが、いまの実力でさらに多くの自主アーティスト案件を受けるのは、サポートするアーティストにとっても自社にとっても不幸な結果にしかならないだろうと判断しました。この決断をしたのは今年の5月ごろでしたが、最初はなかなかこの現実を受け入れるまでに時間がかかりました。

レコード会社、音楽事務所への営業活動の結果

自主のアーティストをサポートしないとなると、残される選択肢は2つ。

  • メジャーレーベル、大手事務所、有力インディーズレーベルに所属しているアーティストをサポートする(図の左上・左下)
  • 事務所から独立して活動している大御所アーティストをサポートする(図の右上)

渡邊ケン×永田 純 対談から紐解くパブリシストの未来とダブルワーク(ポプシクリップ。)から画像を引用しています。
なお、この画像は永田さんが書いた図を参考にポプシクリップ編集部さんが作成したものです。
※引用元に記載されている通り、図に記載されているアーティスト例はポプシクリップ編集部さんの想定イメージのため事実と異なる場合があります。また、これらは相対的なものなので、厳密には上記のようにはっきりとは分かれません。

この2つです。
いずれかの形式でサポートできればいまGMAに足りていないものを補うことができます。また、いずれかで実績をつくることができれば自社に知見が貯まり、新たなコネクションが生まれ、より大きな案件の依頼も舞い込みやすくなります。

なので、それぞれの方向性を模索すべく、営業活動を行いました。
自社の営業用の資料をつくってレコード会社に飛び込み営業を行ったり、事務所の方にアポイント取って話したり、フォームからメールしたり。

結果はいずれもNG。当初はなぜNGなのか、いかんせん把握できなかったので、著名アーティストが複数所屬するマネジメントレーベル(レーベル事業/マネジメント事業どちらもやっている会社)の社長さんと社員さんに相談しに行きました。

そこで分かったこと。結論から言うと、NGの理由は『プロモーションやPRを外注する理由がないから』
レコード会社にしろ、インディーズレーベルにしろ、事務所にしろ、どの会社もプロモーションに関しては専任/兼任の担当者を置いていることがほとんど。そうしたなか、GMAのようなPRエージェンシーに外注するには以下のいずれかの要素が必要です。

  1. 専任担当者ができないことがGMAにはできる
  2. 専任担当者よりも明らかにレベルが高いプロモーションやPRがGMAにはできる

で、現状のGMAには残念ながら1・2のどちらもありません。
1については現在海外向けのパブリシティなどの方向性を模索していますがまだ全然カタチになっていませんし、2についてはレベル感を証明する実績が足りていません。

この段階で、GMAをこれからどう舵取りしていくのかが不透明になり、だいぶ堪えました。

その後、チームで話し合った結果

自分一人で悩んでいても答えは出ない。メンバーに状況を共有して、今後の方向性を模索しました。

最終的に導き出した結論としては、『現状のGMAに期待し仕事を依頼してくれる事務所・レーベルの案件を結果につなげ、少しずつ実績を積み上げていく』ということ。

音楽業界は本当に実績がモノを言う世界です。これは会社にしてから本当に実感しています。実績がなければゼロに近いし、実績があれば一気に100になる世界。いま音楽業界で活躍する先人の方々は、最初は何もない状態から死に物狂いで1組当てて、その実績を活かして更なる実績に繋げ…という積み上げを愚直にしてきた方々だというのも、実際に事務所・レーベルの方々と仕事をする機会が増えてから気づきました。

なので、いまのGMAは地道に実績を積み上げ、力を溜める時期にあります。いつその段階を抜け出せるのかは正直全く予想もつきませんが、やり続けるのみです。

Frekulでの1年間を通した感じた問題意識

『…そもそも、なんでエージェントやろうと思ったんだっけ?』

悩んでいる時期に何度も振り返ったので、ここにも書いておこうと思います。
「日本にエージェントという職業を確立しよう」と思ったのは4年前の2013年、まだ僕が新卒で入社した会社を辞め、海保けんたろーさんが立ち上げたワールドスケープ社(『Frekul』『Lumit』などを運営)で働いていたころです。音楽業界の音の字もわからなかった自分が実際にアーティストと仕事をするようになった時期で、当時「CDが売れない問題」であるとか、「DIYで音楽活動をする」といったトピックについて海保さんが積極的に発信していました。海保さんに限らず、このころは今よりも頻繁にそうした議論が交わされていた記憶があります。

そうしたなかで、日本の音楽業界における活動のトライアングル『レコード会社×事務所×アーティスト』が抱える問題点を知りました。たとえばアーティストが給料(実際は雇用じゃないので給料ではないけど)をもらうことによるリスク(アーティストに当事者意識が生まれにくい)とか、アーティストとスタッフが一蓮托生になりにくい(スタッフは担当バンドが解散しても自分の給与はなくならず、別のバンドの担当になるだけ、といった仕組み上の問題など)とか、アーティスト担当がかまってくれない状況が発生しうる(数字が出ているアーティストに時間が割かれがちなシステム)とか、そのアーティストに関わるスタッフの人数が多すぎてアーティスト自身の視野が狭くなる可能性がある、とか。

※ここは強調しておきたいのですが、上記は誰かを批判するものではなく、あくまでも構造上の問題点として捉えています。このトライアングルでも当事者意識を持って活動しているアーティストは枚挙に暇がないですし、一致団結して結果を出しているチームもたくさんあると思います。それは認識しています。

そこで自分の中に問題意識が芽生え、アーティストがより活動しやすいような座組ってなんだろう? とか、アーティストとスタッフにとってベストな環境ってなんだろう? とか、そんなことを考えるようになりました。そして、いろいろ調べていくなかで海外のアーティストの活動形態が日本と全く異なる(海外ではアーティストが自ら会社を設立し、マネージャーや弁護士、パブリシスト(広報担当者)やブッキングエージェント(出演交渉代理人)を雇うor業務委託契約を結ぶ。アーティストがすべての意思決定と実行を主体的に行っていく。など)ことを知り、衝撃を受けます。

渡邊ケン×永田 純 対談から紐解くパブリシストの未来とダブルワーク(ポプシクリップ。)から画像を引用

なるほど、アーティストがマネージャーを雇うのか、それならお互い死に物狂いで動きやすいな、と。「所屬する」ニュアンスの強いトライアングル式がフィットするアーティストがいる一方、自分で舵取りしていくスタイルがフィットするアーティストにはこの座組が必要だと思いました。ましてや、アーティスト自身のプロデュース能力の重要性が増している以上、後者のスタイルで活動したいと思うアーティストがこれからもっと増えていくことは必然です。

そうした変化に対応するための環境を整備するにあたっては、アーティストから任された業務を遂行するエージェントという職業を日本に確立するのが良いだろうという判断に至り、自分がなろう! と思いました。ひいてはそれが、今よりも日本に良い音楽がたくさん生まれることに繋がると思ったので。

<この章のおまけ>

以下、「レーベルは自分には不要」と豪語するChance the Rapperのチーム編成について書かれた記事です。いま最先端を行っているとされるアーティストの座組を知る上で有益なので参考まで貼ります。


Is Chance The Rapper Indie Artists’ New Team Captain?(Forbes)

彼のコアチームは4人。Chance本人のほかにマネージャーのPat Corcoran、ブッキングエージェント(出演交渉代理人)のCara Lewis、パブリシスト(広報担当)のDan Weinerで構成されている極めて筋肉質な組織です。ブッキングエージェントのCara Lewisはハリウッド4大エージェンシー・Creative Artists Agency出身など、少数精鋭感があります。それぞれがプロフェッショナルであればアーティストのコアチームは本人・マネジメント・ブッキング・広報の4人で済むのかもしれません。

なお、マネージャーのPatrickについては以下の記事に詳しく書かれています。こちらは日本語の記事。

Chance the Rapperと26歳のマネージャーPatrick Corcoranが作るアーティストの新しい生き方(FNMNL)

ブッキングエージェントとPRエージェント(≒パブリシスト)

さて、エージェントになろうと思い立ったはいいものの、実際にエージェントが何をする職業なのかは当時知りませんでした。そこで海外のエージェントのことを調べてみたところ、海外では一般的に、エージェントは『ブッキングエージェント(出演交渉代理人)』のことを指すのだということを知ります。詳細はこれまでのブログに書いたので省きますが、ブッキングエージェントはアーティストとイベント主催者の間に立ち、大規模なフェスや著名アーティストのライブのオープニングアクトなどのブッキングを行う職業のこと。

なるほど、要はライブの出演交渉をすればいいんだ! …ということで、当時担当していたバンドの出演交渉を行うようになり、その後フェスやイベントの主催者の方々とのご縁があって実際にブッキングをするようになります。

…が、すぐに気づきます。日本の音楽業界にブッキングエージェントは必要ないな、と。
イベントの主催者やコンサートプロモーター⇔事務所のマネージャーやアーティスト本人でブッキングが成立している現在の音楽業界においては、わざわざ間に立ってブッキングを仲介する必要はない。もちろん大きなフェスに出たいと思うアーティストはたくさんいるけれども、交渉したからと言って出られるものでもない、ということも知りました

そういう背景があり、改めてエージェントについて調べなおしてみると、今度はアーティストのプロモーションやPRを行うPRエージェント(一般的にはパブリシスト(広報担当者)と呼ぶ)というものも存在することを知りました。Taylor Swift、DAFT PUNK、BRIAN ENO、BECK、MIGOS、SMASHING PUMPKINS、HIATUS KAIYOTE、MONO、coldrainなど、プロモーション/PRをPRエージェンシーに委託しているアーティストは調べるとたくさん出てきます。

なるほど、プロモーションに困っているアーティストはたくさんいるし、これなら需要がありそうだ。PRエージェンシーをつくろう! …ということで石松さん(Web/広告)、峯さん(ライティング/評論)、塙さん(写真/映像/PR)、坂口さん(編集/GIFデザイン)でチームをつくり、Gerbera Music Agencyを設立するに至ります(2015年10月)。長くなってしまいましたが、「エージェントをやろう」と思ってから実際に会社をつくるまでの経緯を書くとざっくりこんな感じになります。

Gerbera Music Agencyの今後

だいぶ長文になってしまったので、最後に方針を変えてからの現在の状況を書いて終わりにしようと思います。

詳細は割愛しますが、幸いとあるフェスをきっかけに素晴らしい音楽を鳴らすバンドと出会うことができ、方針転換を決めた当初の状況を脱することはできています。

あとはそのバンドを含め、現在GMAに依頼してくださっているアーティストをプロモーション・PR面でどれだけサポートできるか、です。事務所・レーベルに所属しているアーティストのサポートが多いこともあり、なかなか自社の活動内容をおおっぴらにできない状況ではありますが、地道に実績を積み上げ、より大きな案件を受け、それを結果に繋げ…を繰り返していくことで今よりもたくさんの知見を貯め、信用・コネクションを強くしていこうと思います。

◆2019年12月追記

弊社の2019年現在の取り組みについて、以下のブログで書きました。

DIYアーティストのサポートをやめる。という決断をしてから2年が経ちました


最後にお知らせ1

GMAはミュージシャンのPRやプロモーション、Web制作をサポートしています。
詳細は会社概要ブログニュースに書いています。

最後にお知らせ2

Spotifyでプレイリストレーベルを始めました。

文脈特化型プレイリストレーベル『Pluto』を立ち上げました(2018年8月)

【Pluto】プレイリスト制作代行サービスを公開しました(2019年1月)

【Pluto制作実績】サッポロビールさまのブランドプレイリストの選曲を担当しました(2019年4月)
【Pluto制作実績】ゼネラルモーターズ・ジャパンさまのブランドプレイリストの選曲を担当しました(2019年5月)

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