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CDショップ大賞はこれからどこに向かうのか? 事務局長に今後の取り組みについて聞いてきた

2017.03.22

Detail

全国のCDショップ店員の投票のみで各賞が選ばれるCDショップ大賞
2017年3月13日(月)に第9回CDショップ大賞2017の授賞式が行われ、大賞を含む全入賞作品が発表されました。

「JAZZ部門に入ったWONKはスゲー気になる。」、「去年CDショップさんに沢山応援してもらったSMAPがまさか功労賞いただけるなんて、嬉しい!」、「CDショップ大賞が宇多田ヒカル、他にはどこを探しても見当たらないだろうっていうくらい頭抜けていたと思う。」など、多くの反響がSNSに溢れ、一時「CDショップ大賞」がTwitterのトレンドワードにもなっていました。

かたや大賞が宇多田ヒカルさんの『Fantôme』に決定したことを受け、著名アーティストが大賞を受賞する近年の傾向に失望する声が相次いでいます。とりわけ、初期のころからCDショップ大賞を知っているリスナーからは「もはや驚きもなければ発見もない」「結果が最初から予想できすぎてつまらない」などの意見もSNSで散見されます。

【参考:歴代の大賞受賞作品】
第1回(2009年):相対性理論『シフォン主義』
第2回(2010年):THE BAWDIES『THIS IS MY STORY』
第3回(2011年):andymori『ファンファーレと熱狂』
第4回(2012年):ももいろクローバーZ『バトル アンド ロマンス』
第5回(2013年):MAN WITH A MISSION『MASH UP THE WORLD』
第6回(2014年):マキシマム ザ ホルモン『予襲復讐』
第7回(2015年):BABYMETAL『BABYMETAL』
第8回(2016年):星野源『YELLOW DANCER』
第9回(2017年):宇多田ヒカル『Fantôme』

そこで今回は、CDショップ大賞を運営する全日本CDショップ店員組合の事務局長の吉川さやかさんに、著名アーティストばかりが大賞を受賞する近年の傾向をどう見ているのか聞いてみました。

※インタビューは大賞発表前の3月4日(土)に実施したものです。序文のみ発表後に書いています。


——CDショップ大賞は「賞をきっかけにブレイクが期待される“本当にお客さまにお勧めしたい”作品を大賞として選出」する賞だと公式サイトに書かれています。実際、第1回は相対性理論、第2回はTHE BAWDIES、第3回はandymoriの作品が選出されていました。一方、ここ最近はBABYMETAL、星野源、宇多田ヒカルとすでに知名度を獲得しているアーティストの選出がメインとなっており、こうした近年の傾向に「やらせか?」「外圧か?」といった意見も見られます。選考は純粋な、CDショップ店員の方々の投票で決めているんですよね?

吉川:はい、もちろんです。
CDショップで働いている人であればアルバイト、パート関係なく投票できますし、1次ノミネートからでも、2次ノミネートからでも好きなタイミングで参加していただいています。

投票期間中はサイトで投票用紙を公開して、必ず実名と店舗名、電話番号などを書いて投票していただいています。
事務局で全ての投票内容を確認し、不審な票(実名や電話番号が書かれていないなど)があった場合は1票1票、店舗に問い合わせて、その店員さんの在籍確認を取るようにしています。組織票のような、何かの意図によって投票させられていると疑われるものがあった場合も、直接店舗に電話して確認しています。

CDショップ大賞の発足当初、投票者の数が約150人という規模での開催だったものが、その後CDショップ店員さん同士の声かけによって現在では約1,000人前後の方に参加していただけるイベントに成長したので、最近は1つひとつ確認していくのが大変な作業になってきました。もうボランティアが欲しいぐらいです(笑)。

でも、こうして丁寧にチェックしているおかげか、おかしな内容の投票はほとんどなくなりました。

——参加する店員さんの数が増えたという状況の変化も1つの要因かとは思いますが、近年の選出傾向から、「“ネクストブレイクが期待される”ではなくもう売れてんじゃん?」という意見が出ています。こうした意見についてはどう見ていますか?

吉川:私も「賞の選考基準に沿っているといえるだろうか? 変えるべきなのだろうか?」と気になる部分はあります。ただCDショップ店員さんが、「ネクストブレイク作品を紹介する」という、この賞の意義を忘れてしまっているわけではないんです。

実は投票した人たちへ電話をして、投票理由を色々とうかがっているんですよ。そうしたら、「ネクストブレイクが期待される作品を紹介するという趣旨は理解しているけども、やっぱり本当に素晴らしい作品で、それだけ抜きん出て傑作だったので、どうしてもお客さまにオススメしたい作品、大賞として推さざるをえなかった」「パッケージを手に取って良い音で何回でも聴きたい素晴らしい作品を推したい」とおっしゃる店員さんがいました。

確かによく知られているアーティストなのかもしれません。でも日々CDショップという現場でお客さまと向き合っている店員さんは、「この実力ならもっと売れてもいいはずなのに、まだまだ知られていない」と現実を見ている。CDショップ店員さんはそうしたジレンマを肌で感じ取りながら、お仕事をしているんですね。だからもちろん、CDショップ大賞の発足当初に決めたポリシーは大切にしているんですが、この賞の軸は「CDショップという現場から直接CDショップ店員が発信すること」ですので、店員さんたちの肌感覚も、中立的かつ公正な立場から大切にしています。

ただ、決して現状に満足しているわけではありません。発足当初は今のようにSNSや動画配信やストリーミングなどもここまで普及していませんでしたし、音楽を取り巻く環境はますます多くが変わってきました。ありがたいことに、最近ではCDショップ大賞をより多くの方たちに知っていただける機会が増えてきましたので、今後は「CDショップ店員さんが、何回でも聴ける素晴らしい作品を紹介する」という軸と、「まだ知られていない作品、これから知ってほしい作品を紹介する」という軸、この2つを主軸として進めたいと考えています。


——「素晴らしい作品」軸と「これから知ってほしい作品」軸を両立する取り組みについてはこのあと詳しくお話を伺うとして、次に部門賞や地方賞について伺いたいと思います。CDショップ大賞には大賞と準大賞のほか、地方賞(北海道ブロック、北陸ブロックなど11の地域)や部門賞(洋楽賞、ジャズ賞、ライヴ作品賞など)が存在しており、「いま本当にフックアップの役割を担っているのは地方賞や部門賞だ」とおっしゃる方もいますが、これらはどういった意図で設けられたのでしょうか?

吉川:地方賞は、各地方のCDショップ店員さんが、地元で活躍している、もしくは地元出身だけどあまり知られていないオススメのアーティストを選出し、作品を紹介していこうということでつくられた賞です。

だから投票のフォーマットも、実は各地方、それぞれのやり方にお任せしていて、「必ずその地域のショップ店員さんの意見から決めること」、そして「3社6人以上の意見を聞いて決めること」という基本条件を満たすことを前提に、地方によってさまざまな選出方法でアーティストが選ばれています。


——なるほど、では地方賞は大賞・準大賞・部門賞のように全体の投票から選ばれるのではなく、各地域のCDショップ店員さんによって選ばれているんですね。

吉川:そうですね。
分かりやすく言うと、北海道のCDショップ店員さんだけが北海道ブロック賞に投票できるということです。北海道のCDショップ店員さんが沖縄ブロック賞に投票することはできません。

最近はありがたいことに地方賞の存在がすごく注目されておりまして、選ばれた翌年にそのアーティストがメジャーデビューをしたり、話題になったりと、かなり盛り上がってきています。たとえば去年、関東ブロック賞ではSuchmos(サチモス)が選ばれたんですが、今年大ブレイクされていますよね。ぜひそういったところには注目していただきたいですし、地方賞をきっかけに、全国の音楽ファンの方々が地元のCDショップへ足を運んで、地元のアーティストを応援するという土壌が生まれていくのであれば、それほど嬉しいものはありません。

それと部門賞ですが、これはよりさまざまな方がCDショップを訪れるきっかけになればと思ってつくられた賞です。
どうしても大賞や準大賞に注目が集まりがちですが、もっと幅広い層の方にCDショップを訪れていただきたいので、部門賞では色々な切り口から素晴らしい作品を紹介できるようにしています。洋楽賞、クラシック賞、ジャズ賞、演歌賞といったジャンルで分けたものもあれば、最近では60歳を過ぎても第一線で活躍できる時代になりましたので、そういったベテランの方に敬意を込めて賞を差し上げたいということでマエストロ賞を設けたり、それからCDというパッケージにこだわらず、ライヴが素晴らしいアーティストを紹介するライヴ作品賞などを設けたりもしています。


——各受賞作品は実際どのくらいセールスに影響があるものなのでしょうか?

吉川:CDショップ大賞では授賞式で受賞作品を発表したあと、各CDショップでお客さまに見ていただけるよう受賞作品を店頭展開するのと同時に、実は受賞から約1カ月間、売上の変化も追っているんですね。

もちろん各CDショップの色合いによって多少は変わってくるんですが、各店舗のデータを集計してみたところ、授賞式の前後1週間を比べると、大賞・準大賞に関わらず、ほぼ全ての受賞作品において販売枚数が平均150%ほど伸びるということが分かりました。なかには260%も伸びる作品もあり、売上という意味では確かに実績に結びついているのではないかなと思っています。

ただ、売上は確かに大事かもしれませんが、みなさまにはぜひCDショップ大賞をきっかけとして、より多くの素晴らしい作品に出会っていただきたいですし、興味をもったアーティストがいれば、ぜひ彼ら彼女らを応援していただきたいです。

そして、作品をつくるアーティスト、作品を届けるCDショップ店員さん、作品を受け取るお客さまのみんなで一緒に音楽シーンを盛り上げていけたら最高ですね。

——今後、このCDショップ大賞をどのようなものにしていきたいとお考えですか?

吉川:本当に素晴らしい作品、思わずお客さまにオススメしたくなる作品を現場から発信し続ける、という基本的なスタンスは変わりません。ただ、年々CDショップ大賞の認知度の向上に伴って担うべき役割が変わってきましたので、来年の第10回を迎えるにあたっては、大賞とは別にもう1つ、「“新人”アーティストの素晴らしい作品を世の中に紹介していく」という軸での展開もしていきたいですね。


——それは新たな大賞を設けるということでしょうか?

吉川:はい、そうです。
本当に素晴らしい、お客さまにオススメしたい作品を“大賞”として表彰するのと同時に、“新人”アーティストによる素晴らしい作品も同等に表彰できるような仕組みをつくります。

来年のCDショップ大賞は記念すべき10回目です。ぜひ注目していただければと思います。

CDショップ大賞 全日本CDショップ店員組合 公式サイト


執筆:坂口文華
編集:金野和磨
撮影:塙薫子(ossie)
撮影協力:art RéG café

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