こんにちは。Gerbera Music Agencyの金野(@konno108)です。

もう4年半も前のものですが、マーケティング業界の著名人、セス・ゴーディン(米ヤフーの元ダイレクト・マーケティング担当副社長。パーミッション・マーケティングバイラルマーケティングなどを広めた)が音楽マーケティングについて語っているPodcast動画があります。以下です。

#109: Seth Godin – Building a Musical Tribe

語られている内容は2019年現在でも通用する普遍的なものであり、アーティストが自身の活動を考えるにあたりヒントになるものばかりです。

今回はその中身をハイライトで紹介します。おもしろいのでぜひ見てみてください。

質問1.

Q(司会者):アーティストの中には、「自分は音楽をつくるのが仕事なのに、どうしてマーケティングやファンづくりまで自分でやらなければいけないのか?」と思っている人もいるようです。そのような苦労をしている人たちに対してはどうお考えですか?

A(セス・ゴーディン):私はそのような人たちに「小学二年生の授業で手を挙げて、先生に当てられるのを待つ感覚を思い出せ」、と言いたいです。当ててもらえたらもちろんそれに越したことはありません。待つスタンスでオプラ・ウィンフリーショー(アメリカの超人気トーク番組)に出られるならそれが一番良いです。

でも、ほとんど選ばれないのが事実。なので選ばれる立場になりたいと思う前に、自分で自分自身を選んであげることが大切です。そして自分を選ぶことというのはそれなりに自己責任がついて回ります。自分のメッセージをどうやって世界に届けるかということがその自己責任の中に入ってきます。

質問2.

Q:おそらく多くのアーティストは、その「どうやってメッセージを世界に届けるか」という点でもどかしさを感じていると思います。どのようにして自分の「トライブ」(注:ある共通の趣味や興味関心で集まる人々を表す言葉。ここでは自分の音楽を好きになってくれそうな集団を指している)を見つければ良いのでしょうか? 一部のアーティストはすごく自然と見つけることができていて、その一方でその考え方にとても苦しめられているアーティストもいます。「自分の音楽が良いだけじゃダメなんだ」と。自分の「トライブ」とはどのような人たちなのか、彼らがそれを発見するためにできる最初のステップはなんでしょうか?

A:まず、偉大な音楽家であること、というのはどういうことなのかについて考えましょうか。
それは、正確に演奏できることでしょうか? それとも、誰かを泣かせたり、心を動かしたりできるパフォーマンスを創り上げることでしょうか? それとも、人々が思わず広めてしまいたくなる音楽を世界に発信することでしょうか。

正確に演奏できることと偉大な音楽家であることはイコールとは言えないと思います。批評家を満足させることができても、またすでに有名な音楽家よりもうまく演奏することができても、必ずしもあなたが偉大な音楽家であるとは限らないからです。偉大な音楽家であるということは、あなたの音楽を聴いたらもう頭から離れなくなる人がいる、ということです。その音楽がもっともっと欲しくなって、人にシェアしたくなる。
アーティストのやるべきことは、誰かに選ばれるために自分をどこかのカテゴリーにフィットさせることや、SXSWの観衆に選ばれるために自分をフィットさせることではない

偉大な音楽家になるためには、まず10人の熱烈なファンをつくることです。あなたの音楽に触れると、もっと聴きたくてどうしようもなくなる人たち。そしてその10人が自分たちの友人を連れて来ればそれが20人になる。50人になる。そのようにしてその数は増えていく。ハリー・ポッターを書いた女性や『The Tipping Point』を書いた男性を見てみなさい。彼らは最初から多数のファンがいたわけじゃない。少ない人数のファンが、他の人たちを連れてきてくれたわけです。これがカギです。

J.K.ローリングス(ハリーポッターシリーズの作者)はそれまで、「これでもか」というほど拒まれてきた。業界の番人達は彼女が偉大な作家だとは全く思っていなかった。ですが、説得するに足りる数の個人書店と12歳児たちが、彼女のことを偉大な作家だと思った。そして口コミが口コミを呼んだ。彼女は別に毎日のように誰かを説得しに回る必要はなかった。ただ、作品を黙々と創っていたら、人々の間で広がった。それだけなのです。

質問3.

Q:ということは、鍵となるのは、まず小さいグループに集中し、そのグループに属している人たちを完全に満足させ、圧倒させ、誰かにシェアしたくなるようなことをし続ければ良いということですね。

A:そうですね。それでもし彼らが心を動かされずシェアもしてくれないのなら、幾つか変えなければいけないことがありますね。グループを変える、もしくは自分の作品を変える、そのどちらかです。私自身、ここ何年も講演者として活動してきて、私のことを全く理解してくれないグループの人たちがいるのです。そこで私ができることとすれば、自分を変えるか、新しいグループを探しに行くかのどちらかです。

質問4.

Q:「リスナーとのつながり方を間違えているアーティスト」と「偉大なアーティスト」との違いは何なのでしょうか?

A:そうですね、一番大きいのは、大衆に合わせてしまうことでしょうか。そんなものは誰も聴いてくれません。なのでそんな音楽はやめた方がいい。100万人を楽しませるのではなく、1000人の心を動かすべきです。

自分のルーツを振り返り、どうしてそもそも音楽家になりたいと思ったのか、まで振り返るべきです。そして自分自身を楽しませることで自分のトライブも楽しませることができる、ということに気づかなければ、音楽家として一生ハッピーにはなれない。だからまずは自分のつくる音楽で自分自身を心の底から楽しませること。そこから始めなければいけません。ジャンルに適合するとか、人々に批判されない音楽をつくるとか、そういうことじゃない。それはゴールでもなんでもない。

つまらないありきたりなものになるのではなく、挑戦者であるべき。人々が国境を越えて聴きに来るようなもの。本当に機能するルールというかモデルというのは、中心にいることではなく、端、キワにいることだ。

そして、もう1つ忘れてはいけないポイントは、「忍耐力」。一夜にしてヒットソングが生まれた一発屋ではなく、本当にプロフェッショナルな音楽家たちに話を聞くと、彼らは皆とても辛抱強い。つい先日もあるジャズ・ミュージシャンの音楽を聴いたのですが、彼女はもう30年も音楽をやっている。そして、やっと彼女のトライブが現れ始めている。信じたくない話だが、それくらいの忍耐が必要だということです。

質問5.

Q:僕(司会者)も音楽をやってますが、これからどんどん年をとるにつれて、その点においては本当に受け入れていかないといけないなと思います。それだけの年月をかけて1つのことに打ち込んで、本当に情熱を持ってつくり続けている人の作品は、彼ら自身が思っている以上に素晴らしいものですよね。音楽に対する愛だけに集中しているから、素晴らしい作品ができた時にものすごく人々の心を動かしますよね。

A:そうなんです。だってこの国(アメリカ)には3億人の人々がいて、そのうちのたった1千万人しか来年音楽にお金を使わないんです。なので2億9千万人の人たちはアーティストにとっては死んでるも同然なのです。確かにその1千万人にリーチするための手段は確かにあるかもしれないけれど、その群集の中心にいる、平均的で自己中心的な人たちを楽しませることは決して考えないでほしい。

質問6.

Q:先ほど話題にあがったように、多くのアーティストが誰かにフックアップしてもらうのを待っているとか、誰かが立ち上がって率いてくれるのを待っているだけです。「トライブ」のあり方は、そうではないですよね。あなたは「人々を率いるのに許可は必要ない」とどこかで言っていましたね。

A:はい。私たちの文化において、大衆は誰かが立ち上がって「私についてきて」と言うまでただ待っているのが日常茶飯事です。レイチェル・マドウ(MSNBCのニュース・ショー「The Rachel Maddow Show」のキャスター)のような人が立ち上がってくれることを期待しているのでしょう。大衆はあなたに対して、どこに行けば良いか教えて、とは聞いてくれない。誰かがどこかに行くのを待って、それからその人についていくのです。

つまり、あなた自身が立ち上がり、トライブを率いるべきです。

質問7.

Q:何か、これからトライブと繋がろうとしている、次世代のアーティストに向けて、最近の動向とともに、何か最後に一言いただけますか。

A:アーティストはあくまでもアーティストであるべきだと思います。ビジネスパーソンになろうとしない。あなたがずっとつくりたかった音楽をつくるべきです。なぜならそんなにいくつもチャンスは降ってこないから。それなら自分が誇れる音楽をつくるべき。もしかしたらそれは売れないかもしれない、けれどありふれた平均的な音楽だって売れない。だったら自分が信じるものをつくりなさい。

誇らしげに、大胆にやるんだ。そうしたら世界が耳を傾けてくれるかもしれない。

———

動画はここまでです。

筆者が好きな某マンガのなかに、こんなセリフがあります。

「客に飽きられるヤツは、それ以前に自分で自分に飽きている」

これは真理だと思います。
自分のつくる音楽で自分自身を心の底から楽しませること。とても難しいことですが、それができるからファンがついてくるんだと思います。

音楽マーケティングはそこを出発点にすべきです。

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